ずっと気になりつつもFLINTでそんなに不満がなかったため先延ばしになっていたUNIVERSAL AUDIOのリバーブ UAFX GOLDEN Reverberatorを購入しました。
常にONにしておくリバーブとして
現在リバーブは他にA7があり、アンビエント的に遊ぶ時の飛び道具っぽい効果はそれに任せ、常にONにしておくリバーブとしてFLINTよりもUAFXの方が良さそうであればFLINTと入れ替えるつもりで購入しました。
アンプのあるDTM部屋は吸音してかなりデッドな音なので(それはそれで良いのですが)、基本的にいつもsmall roomもしくはPLATEを模したリバーブをうっすら掛けています。
普段DAW上でUAD2のEMT140やLexicon224を使っていて、多分FLINTより良いだろうと思ったのと、アンプ2台(Blues Junior&LITTLE JAZZ)のステレオ環境で試してみたかったため試奏はせずネットで注文しました。
今までBOSSのRV-6やtc electronicのHall of Fame 2などを使ったことがありますが、それらと比べてFLINTの残響音の質が断然好みだったので、とりあえずは満足していました。
でも、練習中常に聴こえる残響音、料理で例えるなら出汁のような感じで結構重要だと思っていて、個人的に信頼しているUNIVERSAL AUDIOのリバーブペダルということで気になっていました。
FLINTとの比較
UAFX→FLINTの順で直列に接続して、ハムバッカーのセミアコでジャズのクリーントーンで比較しました。全てBluesJunior II(Bill M mod済)とLITTLE JAZZを左右2m離してステレオで鳴らした時の比較です。
まずこの2台、エフェクト音の音質がFLINTはかなりMIDに偏っていて(COLORツマミはセンターで)、UAFXはフラットな感じでした。そういう感じなのでUAFXでFLINTを再現しようとするとかなりLOとHIをカットしたくなり、2つのツマミを左に回すのですが、FLINTのようなMIDに偏ったエフェクト音にはできません。
またFLINTはCOLORつまみがセンターの時はLoとHiの減衰がかなり速いです。ギターのLoが伸びて濁ったり、Hiがドライ音の邪魔をしないような設定をデフォルトにしてあるのだと思います。COLORを右に回すと伸びる減衰がHi寄りにシフト、左に回すとLo寄りにシフトしやや低音が伸びるようになります。ちなみにBlueSkyはこのHi Damp、Lo Dampの調節を個別にできたと思います。
ドライ音
トゥルーバイパス設定にした時のバイパス時のドライ音、ONにして100%DRYにした時の音質、音量共に違いは分かりませんでした。どちらもアナログドライスルーです。
モデリング元
SPRING/'60sは、FLINT、UAFX共にフェンダーアンプ(Twin Reverb?)のリバーブタンク
PLATE/'70sは、UAFXがEMT140です。FLINTはEMT250?
HALL/'80sは、UAFXがLexicon224、FLINTも224でしょうか?
元ネタもやや違うし、開発メーカーも違うので当然アルゴリズムも違うため、それぞれにしか出せない音がかなりはっきりとある感じです。
なんとなくFLINTのリアル版みたいに安易に単純に考えていたのですが、全然違いましたね(特にPLATEはUAFXは鉄板のリバーブを再現したのに対して、FLINTはデジタルリバーブのモデリングですし)。
SPRING / '60s
完全にUAFXの方がリアルでした。Blues Juniorから鳴らしているのにデラリバのリバーブが想像できました(笑)素晴らしいです。スプリングの音が気持ちよくてついMIXを上げたくなります。
PLATE / '70s
モデリング元が違うので比べるのが難しいのですが、UAFXのPLATEは凄くいいです。深くてリアルでゴージャス。低音の残響も伸びて、一人でギターだけで弾いていると気持ち良いのでMIXを上げたくなります。でもややLOが出過ぎている感じがしないでもないため、LOを下げるのですが、そうするとややリアルさがスポイルされ、残響の量も物足りなくなるのでMIXを右に回すと今度は残響の高音がうるさい感じになるのでHiを下げるのですが、左に回しきってもそこまでHiをカットできないため、FLINTのようなカマボコ状の残響音にできない感じです。そのためなのか何故なのか、FLINTの方がギターの邪魔をしない感じがしました。カマボコ状のWET音は低音が軽くフットワークが軽い感じ?DRY とWETが溶け合って一体となり良い意味で分離が悪い感じ?
HALL / '80s
PLATEと同様UAFXは低音の充実と深みがありゴージャスなのですが、もう少しMID寄りな方がギターには使いやすいのかな?という感じがしました。
想像ではUAFXの方がギターのドライと残響の分離がよくて、いい感じになるはずだったのですが、むしろUAFXの方がDRY/WETのバランスが難しく、小さいと物足りないし、上げるとゴージャスなのですが若干わざとらしく感じてしまうという状況になりました。今までFLINTで慣れ過ぎていたためだと思います。
WET音のみで比較
そこで、試しに両機種ともMIXを右に振り切った状態でWET音だけ聴いてみました。
FLINTはWET音のアタックが柔らかくフェイドインするように鳴り始めるのに対して、UAFXはぼやけてはいるもののアタックの鋭いWET音が鳴るということが分かりました。かなり大きな差です。これがFLINTのリバーブ音が目立たないポイントかもしれません。
そしてやはりFLINTはMID集中のぼんやりローファイな残響音、UAFXは残響音がくっきりしていてフラットな感じでした。
FLINTはこのMID(というか中低域)集中のアタックの遅いWET音がギターのDRY音を邪魔せずにサポートする感じがあります。そんなにMIXを上げなくても掛けるとギターの輪郭が太くなる感じです。これに慣れていたせいでUAFXのMIDが物足りなく感じるのかもしれません。
一方UAFXはそういうサポート感はないのですが、残響の奥行き(立体感)が純粋に気持ちよくてつい深めに掛けて空間を聴きたくなる感じです。とにかく空間がリアルです。
超ロングリバーブ
飛び道具的な使い方ですが、FLINTのHALLモードでDEACAYを最大近くまで長くした時の減衰の仕方とローファイな音質(LOとHIが抜けきって干からびたエフェクト音がずっと残る感じ)が独特で好きなのですが、これはUAFXでは再現できませんでした。残響音をFLINTのようなローファイカマボコ型にどうしてもできないのです。
UAFXもtc electronicのようにエディターで色々設定できたら良かったのですが…。
そういえばUAFXは元tc electronicのTore Mogensen氏が開発に関わっています。
ということで、ひとまず1日弾いてみた印象をメモしてみました。
正直キャラクターが違い過ぎて甲乙つけがたい印象です。また、FLINTに慣れている耳がUAFXにまだ慣れていないということもかなりあると思います。
総合的に、FLINTはリバーブを目立たせずギターと一体化してぼんやり残像を残すみたいな使い方がしやすく、UAFXはやはりDAWでプラグインでリバーブを掛けた感じに近く、デフォルメされていないリアルな音響という印象です。
スプリングリバーブやPLATEリバーブ、224のようなデジタルリバーブのかなりリアルなペダル型エフェクターが欲しい場合はUAFXで間違いないと思います。
どちらか一つを選択したかったのですが、FLINTの置き換えというか、用途が違う感じがしています。