JG251 blog

ギター、エフェクター関連、DTM、etc.のブログ

IK Multimedia ARC SYSTEM 4(ARC STUDIO)vs Sonarworks SoundID Reference 比較レビュー

約1年ぶりにDTM部屋を測定しました

先日発売されたARC STUDIOが気になり、場合によってはReferenceから再度ARC Studioにアップグレードすることも視野に、まずはハードウェアなし、プラグインを使用しての比較です。モニター環境はRME UCX~ADAM S2X(スピーカースタンドに載せて間隔1.5m)で結構吸音してかなりデッド目な部屋での使用です。

測定

まず、単純に測定するポイントの数がARCが21箇所に対して、SoundIDは37箇所、加えてリスニングポイントからスピーカー、スピーカー間の距離の入力や左右それぞれのスピーカーにマイクを1センチまで近づけてレベルの測定(左右のレベル差の測定)など、測定にかかる時間が倍近くかかります(約20分)。SoundIDは手持ちでもできますがどちらもマイクスタンドを使用しました。

ARCは7箇所(ピックを置いて目印にしました)を3段階の高さで測定するだけで、SoundIDと比べるとあっさり目ですが、SoundIDの方は高さの概念がないです。

測定マイク

また、マイクに関してはSoundIDは固有のシリアル番号を入力する(入力するとその周波数特性がグラフで出る)のに対して、ARCでは今まで販売されてきたARC用マイク3種のどれかを選択するだけです。

ちなみにSoundIDは
「部屋を測定する際の専用マイクは出荷時に検査、測定しそして個別にシリアルが割り当てられています。 そのシリアルを測定時に入力することでマイク出荷時の周波数特性を踏まえた上で、部屋の周波数特性を測定します。 そのため、より正確でフラットで正確な測定と補正を行います」
と公式サイトには説明があります。

背景とそれぞれのメリット

私は初代からARC2まではARCを使用してきましたが、Systemwideの利便性からSoundIDに乗り換えました。YouTubeの音も含めすべての音が補正された状態にしたかったからです。今回のARC STUDIOではそれを実現できるため、補正結果がSoundIDよりも良い感じだったら乗り換えるつもりです。

私にとって補正後の音質以外の面でのARCのメリットはCPUパワーを消費しないことSoundIDのメリットはヘッドフォン補正があることといった感じでしょうか。私はCUBASEでコントロールルーム機能を使うし、CPUパワーもそんなに気にしないのでプラグインで特に不満はありません。ARCもシステムワイド的な機能があればプラグインでOK(というか必要以上にADDA通したくないしケーブルも増えるのでむしろプラグインの方がいい)な人です。

今なにかSoundIDに不満があるわけでもないので、余程のメリットがない限りそのままSoundIDを使い続けるだろうなと思いつつの比較です。

CUBASE13上で聴き比べ

測定が済んで、早速CUBASEで歌モノとEDM(Skrillexとか)系を数曲並べて念入りに聴き比べてみました。

まず、ARCは補正を掛けたデフォルトの状態ではSoundIDよりも補正が弱めで、CORRECTION TYPEをSharpにするとSoundIDの補正の音と近づきました。ちなみに今回の比較は全てリニアフェイズモードでやっています。

SoundIDでは補正後の適正レベルがSafe Headroomをオンにすると出てきます。ARCでは補正後のレベルが赤ランプがつかないように手動で下げていきます(今までのARCと同じですね)。すると共にほぼ同じくらいの値(0.5dBの差しかありませんでした)になりました。

SoundIDの今回の測定では右スピーカーが+0.1dBとなっていて、Adjust to listening spotをオンにするとこの左右差が補正されます。これが結構ずれていたりするとDelayの値に0.0msでない値が表示され、左右の時間軸での補正も入ります。ARCの方はこの辺の左右差についてはどうなっているのわかりません。選択の余地なく補正されているのかもしれないし、そこは感知していないのかもしれません。ただ、初代ARC発売の時にどうやらタイムドメインでの補正もしているらしいという情報を目にしたことがあるので、もしかしたらやってるのかもしれないし、その情報が正しくなかった可能性もあります。測定時のポジションを見た感じ、あの測定でできるのかな?という気もしてきます。

この辺はあえて左スピーカーだけ音量を上げるなどして測定してみたらすぐに判明すると思います。

好み

個人的にはつまらなくても良いからなるべくきちっと補正したい方なので、というかそもそもその場合のつまらない音とか、テンションが上がる音っていうのがどんな音なのかにもよりますね。私としてはできるだけベースのピッチが聞きやすくて、センターの音がちゃんとセンターで立体的にくっきり点で鳴っていて左右の定位配置も見やすいどっかりした音が好きなタイプなので、補正によってちょっとこぢんまりしてしまったとしても、私にとってはそれはテンションの上がる音となります。その意味で、今回どちらも(ARCはSharp設定)結構似たようなテンションの上がる音になっていると思いました。

結論

そのうえで、あくまで私の環境と測定と好みによる率直な印象は、SoundIDの方がくっきり立体的に見えたという感じです。微妙な差とかではなく、いや、微妙な差なのでしょうけど、多分ブラインドチェックで判別できるような(したわけではないですが)差でした。印象としてはSoundIDの方がきっちり全帯域で補正できている印象が強く、音がどっしり座っている感じがしました(ARCのCombined L/R Correctionの切り替えも試しました)。

ARC初代の頃、部屋の吸音もあまりできない環境でARCに補正させた音は補正前とかなり違う音で、掛けた途端に小さいラジカセで聴いたような音になる印象だったのですが、環境を整えスピーカーもグレードアップさせてからは補正前と後ではそこまで大幅に印象は変わらないです。補正でより整えるという感じです。で、その最後の補正をどっちにさせたいかと言われたら今回の比較チェックではSoundIDという結論になりました。測定の成功度、部屋の音や使うスピーカー、好みによって印象はかなり変わるのだと思います。

加えて、SoundIDでMax Low FrequenciesをExtended以上にした時の超低音の出方が好みで、普段いつもExtendedにしているのですが、この辺も含めた設定の自由度やヘッドフォン補正のことも考えると、私の場合はARC STDUIOはひとまずパスかなーという結論です。

それにしてもこういう比較チェックはとても疲れますよね。ARCもハードウェア版だと音が全然違ったりして(笑)